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 ぎい、と木材の軋む音がした。少女はふと息を呑み、鉄で補強された荘厳な門を見詰める。漸く此処にまで、という思いも、未だ此処までしか、という思いも、少女の中には両方あった。
 海に面し商業で栄える強国、玖潭。椛峅は玖潭に隣接する国ではあるが、しかし、両国の間には強い結び付きと言えるものは無い。椛峅は葦原において何れの国とも緊密な関係を築かず、敢えて孤立という道を選択して独自の地位を築いている。山々に囲まれた椛峅は領土の狭い国で、玖潭の様な民主制は敷かれていない。市民による共和制とは言っても、椛峅には未だに身分制が強く残っていて、中央は貴族、地方は豪族によって政が行われているのが現実だ。その椛峅を支えているのは豊かな鉱物資源。椛峅で採掘される鉱物は質が良く、椛峅の貴族や豪商が鉱山から得るものは大きい。そしてその富故に、椛峅は他の強国と同盟を結ぶ事も無く、葦原において一定の力を有している。つまり、如何に小国と言えども、資源が有る限り椛峅は力を保っていられるのだ。しかし、それは同時に、資源が枯渇すると椛峅は衰亡するという事でもあった。
 ぎぎい、と関門が更に軋み、閉じられていた視界が徐々に開けてくる。嗚呼、と少女は祈る様に一度瞳を閉じると、今度は決意の篭った眸を楢斐の関門に向けた。
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